●事件の概要
指定商品中「のど飴及びキャンディー」について登録商標「花粉」の専用使用権の設定を受けたカバヤ食品(原告)が、「花粉のど飴」の標章を商品「のど飴」に付して販売をしているサクマ製菓(被告)に対して、専用使用権に基づく差止請求及び損害賠償を請求した事件。
●裁判所の判断
(本件登録商標と被告標章の類否について)
被告商品がのど飴であることに照らせば,被告標章のうち「のど飴」の部分は,標章の付された当該商品の内容,属性を示す普通名称であるから,自他商品識別機能を有しない部分である。また,被告標章3のうち末尾の「2」は,数字であって,商品名の末尾に付された場合には,通常,続編ないし改良製品等であることを示すものであり,それ自体としては自他商品識別機能を有するものではない。
他方,
被告標章のうち「花粉」の部分については,被告商品の属する,のど飴ないしキャンディーの分野において,通常,商品の原材料や効能・用途を意味する語ということはできない。
そうすると,
被告標章においては,「のど飴」ないし「のど飴2」の部分を除いた「花粉」の部分が自他商品識別機能を有する部分として,見る者の注意をひく部分というべきである。
上記のとおり,被告標章においては,「花粉」の部分をもって要部ということができる。
そして,被告標章においては前記のとおり「花粉」の部分が自他商品識別機能を有する要部というべきところ,当該部分は,本件登録商標と称呼及び観念が同一である。
上記によれば,被告標章は,本件登録商標と外観において類似し,その要部の称呼,観念が同一であるから,いずれも本件登録商標に類似するものというべきである。
(被告標章は商品の普通名称,効能,用途,使用の時期を普通に用いられる方法で表示する商標に当たるかについて)
「SPA!」,「ぴあ」等の情報誌において,平成10年ころから花粉症対策の商品としてキャンディー(のど飴)やガムなどの菓子類が,手軽に花粉症対策を行うことのできる機能性食品として紹介する記事が掲載され,その後現在まで,毎年,花粉症の季節である2月や3月ころに発売される情報誌に,「花粉シャット」,「花粉本舗」といった標章を付した花粉症対策用の飴など種々の商品が掲載されていることが認められ,また,平成14年8月ころから,花粉症罹患者を対象としたウェブサイト上において,「花粉のど飴」の語が「花粉症対策用のど飴」の意味で用いられた例が存在することが認められるが,
「花粉のど飴」の語が,「花粉症に効くのど飴」ないし「花粉症対策用のど飴」を意味する語として,一般的に認識され,使用されているとまでは認めることができない。
また,被告標章の使用態様に照らせば,
被告標章1,2は,被告商品の大袋の表側中央部及び裏側上側のそれぞれ目につく部分に大書されているものであって,「普通に用いられられる方法で表示する」ものということもできない。
上記によれば,被告標章(「花粉のど飴」)ないしそのうちの「花粉」部分が,
「指定商品の普通名称,効能,用途等を表示する商標」(商標法26条1項2号)に当たるとする被告の主張(抗弁)は,採用できない。