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(1)商標事前調査
商標の使用が他人の商標権の侵害とならないかどうか(侵害可能性)、連邦商標登録されうるかどうか(登録可能性)を調べるために行います。
訴訟の頻度も高くまた費用も高額なアメリカにおいては、他人の商標権侵害を未然に防止するこという意味で調査は欠かせません。また、詳細に未登録商標等まで含めて調査(フルサーチ)を行わなかったことにより、「悪意」が認定され、損害賠償額がフルサーチを行わなかった場合よりも高額になる場合があります。
また、連邦商標登録を受けておけば安心をして商標の使用ができます。
調査対象
連邦商標登録・連邦商標登録出願、州商標登録・州商標登録出願、未登録使用商標(コモンロー上の商標権)、商号(トレードネーム)、インターネット上のドメインネーム
具体的には、
@連邦商標登録・連邦商標登録出願
アメリカ特許商標庁(USPTO)連邦商標登録のデータベース
(http://www.uspto.gov)
A州商標登録・州商標登録出願
州商標登録のデータベース
B未登録使用商標(コモンロー上の商標権)、商号(トレードネーム)、インターネット上のドメインネーム
電話帳、業界紙、インターネット各種サーチエンジン、インターネット上のドメインネームデータベースなど
未登録使用商標の調査を完璧に行うことはほとんど困難であり、どこまでの調査を行うかは、新しいブランドへの投資額に見合った時間と費用を投入することになります。
(2)出願
1)保護対象
@トレードマーク(商品商標)
商品を識別するために使用される文字、図形等をいいます。
Aサービスマーク
サービスを識別するために使用される文字、図形等をいいます。
B団体商標
団体商標とは、商品やサービスを販売や提供するにあたって、その団体の構成員の商品やサービスであることを明らかにする標章をいいます。
C証明商標
証明商標とは、商品やサービスについて、その商品やサービスに係る原産地、原材料、製造方法、質又はその他の特定の品質を証明するために用いる標章をいいます。
なお、アメリカでは、言葉、名称、シンボル、数字、文字、スローガン、商品またはその包装の形状、色彩、さらには、音や匂いなど、伝統的な商標の概念を越えて、自己の商品・サービスと他人の商品・サービスとを識別する機能を有するあらゆる表示が商標であると考えられています。
立体商標
登録可能性を肯定しており、たとえば、「コカコーラのクラシックボトルの形状」が商標登録されています。
色彩のみからなる商標
登録可能性を肯定しており、「形状・輪郭のない単一色の色彩または色彩の濃度」であっても登録の可能性があり、たとえば、「家の断熱材」について「ピンク色」が商標登録されています。
音響商標
たとえば、「ライオンの吠え声」(権利者:映画配給会社MGM)として商標登録がされています。
匂い商標
たとえば、「糸」について「フルメリア(花)の匂い」の商標登録を認められています。ただし、登録例は多くありません。
2)出願のベース(基礎)
以下の3種類の出願のベース(基礎)=連邦商標登録を求める根拠があります。
@)使用に基づく出願(ランハム法(以下、記載省略)1(a))、
州際取引または国際取引において現実に商標を使用していることに基づいて行う連邦商標登録出願です。
アメリカ法が予定している本来的な出願形式(出願ベース)です。
A)使用意思に基づく出願(1(b))、
出願時に使用をしていなくても、近い将来、州際取引または国際取引において商標の使用を開始する誠実な意図に基づいて行う連邦商標登録出願です。
1988年から導入されました。
なお、出願公告決定前であれば、使用を主張して使用に基づく出願に切り替えることができます。
B)パリ条約上の外国登録に基づく出願(44(e))
本国登録があれば、それを基礎に出願をすることができます。パリ条約6条の5A(テルケル商標)に基づいて行う連邦商標登録出願です。
優先権主張出願(44(d))を伴うことも可能です。
なお、使用意思に基づく出願と組み合わせて複数の出願のベースを主張することも可能です。これによって、たとえば本国登録が取り消されたことにより本国登録に基づく出願のベースを主張できなくなっても、使用の意図に基づく出願のベースを主張することで、出願が維持できます。また、所定の期間内に使用陳述書を提出できず使用の意図に基づく出願のベースを主張できなくなっても、本国登録に基づく出願について登録を受けることができます。
C)マドリッド協定議定書出願(66(a))
アメリカが、2003年にマドリッド協定議定書に加入したことに伴い、アメリカを指定国とするマドリッド協定議定書出願をすることによって、アメリカへの国際登録の「保護拡張請求」(Request for Extension of Protection)が可能となりました(66条(a))。
アメリカでは、マドリッド協定議定書に加入したことに伴い、マドリッドプロトコール施行法が制定され、マドリッド協定議定書と使用主義との整合性を図るため他国にはない要件を課しています。
3)出願に必要な書類・記載事項
いずれの出願ベースも、
@願書
出願人の氏名・名称、住所
商標を用いる商品・サービス
「商標を用いる商品・サービス」の記載は、明確、かつ、具体的に特定することが要求されています。
たとえば、衣類について「clothing」と指定したのでは広すぎ、「sweater」程度に具体的に記載する必要がある。
多区分1出願が可能です。
A商標見本(商標を示す図面)
文字商標の場合には、商標図面は添付せず、願書に記載します。
「商標」は、現実に使用している商標又は使用を予定している商標と同一であること
が必要です。
B出願料
Cさらに、
@)使用に基づく出願(1(a))、
使用に基づく出願であることの表示
出願商標の使用開始日
商標の使用見本(specimen)
「使用」
商品やサービスについて単に商標を使用すればよいわけではなく、取引において「誠実かつ真正に使用(bona fide use」する必要があります。
商品商標は、何らかの形で商品自体や包装に付されていなければならない。カタログなどの宣伝広告資料やインボイス(送り状)に付される広告的使用は、商品商標の使用とはされません。
サービスマークに関しては、商品商標とは異なり、広告的使用はサービスマークの使用とされます。
A)使用意思に基づく出願(1(b))、
使用の意図に基づく出願であることの表示
B)パリ条約上の外国登録に基づく出願(44(e))
本国登録に基づく出願であることの表示
本国登録の登録証の写しとその英訳
C)マドリッド協定議定書出願
アメリカを指定国とするマドリッド協定議定書出願(MM2)は、国際事務局がその出願を受け取ったとき、「誠実な使用意思宣言書」(MM18)が添付されていることを条件として、アメリカ出願とみなされます(66条(a))。
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