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(1)商標権の効力
登録されたネーミングやマーク(登録商標)を、指定した商品やサービス(指定商品・指定サービス)(同一範囲)について独占的に使用できる権利(専用権)(商標法51条)と、
登録商標と同一のネーミングやマークを指定商品・指定サービスと類似の商品やサービス、登録商標と類似のネーミングやマークを指定商品・指定サービスと同一・類似の商品やサービス(類似範囲)について他人が使用することを禁止できる権利(禁止権)(商標法52条)を有します。
禁止権を含めたのは、同一ではなくとも似たようなネーミングやマークは、これが市場において同時に使用されると、混同してしまい、ネーミングやマークがコミュニケーションの手段として機能を果たせなくなってしまうからです。
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ネーミング・マーク\商品・サービス |
同一 |
類似 |
非類似 |
同一 |
使用・禁止 |
禁止 |
− |
類似 |
禁止 |
禁止 |
− |
非類似 |
− |
− |
− |
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登録商標の同一類似範囲における正当な権原のない第三者の商標の使用は、商標権侵害となり、差止め、損害賠償を請求されてしまいます。
なお、商標の使用とは、商標を商品、商品の包装又は容器、及び商品取引書に用い、若しくは広告宣伝、展示及びその他の商業活動に商標を用いることをいいます(商標法4条、実施条例3条)。
自然人、法人又はその他の団体はその生産、製造、加工、選択又は販売した商品について商標専用権を取得する必要がある場合、商標局に商品商標登録を出願しなければなりません(商標法4条)。
(2)商標権侵害に対する救済
行政と司法の並行救済(双軌制)
商標権侵害の救済方法として、裁判所(人民法院)に解決を求める方法と、行政管轄機関(工商行政管理機関)に解決を求める方法の2ルートがあります。
日本では、司法救済に限られるのに対し、中国では司法と行政の並行救済が認められており、「双軌制」と呼ばれ中国商標法の大きな特色となっています。
現在、商標権侵害において、90%以上が省、県における工商行政管理局に行政による救済が行われています。
1)行政管轄機関(工商行政管理機関)による救済
(馬P209・中川P144・236)
侵害行為が成立すると決定したときは、侵害行為の即時停止、侵害品等の廃棄を命じ、併せて科料に処することができます。
侵害者が、信愛品等の廃棄命令等に応じない場合には、工商行政管理機関は人民法院に強制執行の申請を行うことができます。
当事者は、行政管轄機関(工商行政管理機関)の処理の決定に対して不服があれば、処理の通知を受け取った日から15日以内に人民法院に行政訴訟を提起できます。
なお、行政管轄機関(工商行政管理機関)は、当事者の請求により、商標権侵害に係る損害賠償請求について調停を行うことができ、調停が不調の場合には、当事者は人民法院に民事訴訟を提起できます。
メリット
・裁判所による救済に比べ一般に処理が迅速。一般には、1週間以内に取締りが終え、1〜3ヶ月で処罰が決定される。
・手続が簡単で、費用が安価。
・誰でも届出が可能であり、また、必ずしも侵害者が特定される必要はない。
デメリット
・科料は国庫に帰属し商標権者に支払われることはない。また、損害賠償を請求することができない。
・強制執行ができない。
・工商局の権限はその行政区画内に限られるので、侵害が別の行政区域にまたがっている場合には、その管轄の工商局にあらためて侵害処理の届出を行わなければならない。
・地方によっては、地方保護主義の観点から、迅速性に欠ける場合がある。
2)裁判所(人民法院)による救済<br>
メリット
・損害賠償請求をすることができる。
・強制執行ができる。
・判決の効力は中国全土に及ぶ。
デメリット
・証拠の収集、訴訟の追行に時間、労力と費用がかかる。ただし、訴訟前の仮差押さえ、仮処分の申請、証拠保全が可能である。一般には、判決が下されるまで1年半以上かかる。
・商標権者のみが提訴可能であり、侵害者を特定する必要がある。
(3)商標権の管理・更新
(岩井P131・中川P80・馬P99)
1)登録商標の使用義務(商標法44条4項)
商標局による3年の不使用取消制度
継続して3年間登録商標を使用しなかった場合は商標局がその登録商標を取り消します。
商標の使用とは、商標が商品、商品包装あるいは容器、及び商品の取引文書に用いられることを含み、広告宣伝、展示及びその他の商業活動において商標が用いられることをいいます。
文字と図形からなる登録商標について、文字又は図形を単独で使用したり、文字と図形の位置を変更したりして使用する場合、登録商標に使用された文字、文字字体を下記のように変更しようする場合は、登録商標の使用と認められません。
文字の変更
漢字の繁体字と簡体字
繁体字と簡体字相互間は禁止権範囲にあり、たとえば、繁体字が登録されているときそれに対応する簡体字を他人が登録することはできません。
しかし、相互間の改変使用は登録商標の使用とは認められないので、たとえば、繁体字が登録されているとき簡体字に変更して使用していても登録商標の取り消しを免れません。
英文の大文字と小文字
上記漢字の繁体字と簡体字との関係と同様な関係にあります。
文字字体の変更
文字字体の変更、たとえば、楷書、草書、行書相互間の変更によって、登録商標の使用であると判断しにくくなった場合、たとえば、登録商標の文字のロゴ化が進んで、登録商標と判断できなくなった場合、には登録商標の取り消しを免れません。
2)登録商標の品質保証義務(商標法45条)
登録商標の使用に際し、その商品を粗製濫造し、品質を偽り、消費者を欺瞞したときは、工商行政管理部門がそれぞれの状況に応じて期限を定め是正を命じ、かつ通報しまたは罰金に書すことができ、若しくは、商標局がその商標登録を取り消すことができます。
3)登録商標の適正使用義務(商標法44条1項)
上記(1)において記載したように、
文字と図形からなる登録商標について、文字又は図形を単独で使用したり、文字と図形の位置を変更したりして使用する場合、
登録商標に使用された文字、文字自体を、たとえば、漢字の繁体字と簡体字、英文の大文字と小文字との間で変更使用したり、楷書、草書、行書相互間の変更によって登録商標の使用であると判断しにくくなった場合、
は、無断で登録商標を変更したことになり、商標局が責任をもって期間を定めて是正させ、又はその登録商標を取り消します。
また、登録商標の使用であるとして認められないので、変更した商標に登録標識○注、○Rを使用すると、登録商標の虚偽表示行為とされ、地方工商行政管理部門は、これを禁止し、期限を定めて是正命令をし、また、その事実を公表し、罰金に処します(商標法48条(1))。
したがって、安全のために、登録された文字と態様をそのまま使用し、また、登録商標の態様を変更して使用する場合は、実際の使用態様をあらためて出願しておくことが望ましいといえます。
※○注、○Rは○のなかに「注」「R」の文字
4)商標標識の管理義務
ラベル、包装用紙等の標識の印刷、製作は自己又は工商行政管理機関指定の印刷会社に商標登録証等を提出して依頼しなければなりません(商標印刷制作管理規則)。
5)登録商標の更新
登録商標の存続期間は10年であり、登録の日から起算します(商標法37条)。
存続期間満了にかかる登録商標について継続使用をしたい場合には、存続期間満了の6ヶ月前から6ヵ月後の1年間の間に更新登録の申請をする必要があります(商標法38条)。
(4)商標権の譲渡・ライセンス(使用許諾)
1)譲渡
商標権を譲渡するときは、商標権者は同一または類似の商品について登録された同一または類似の商標を一括して譲渡しなければなりません。
一括譲渡がなされないときには、商標局は期限を定めて補正すべき旨を通知する。期限が過ぎても一括譲渡を具備する補正が行われない場合には、商標権の譲渡申請は取り下げられたものとみなされます(実施条例25条2項)。
さらに、譲渡申請時において、商標局は誤認、混同、その他悪影響を生じさせるかどうかの審査を行います。誤認混同等が生じるおそれがあると判断された場合には譲渡申請は承認されません(実施条例25条3項)。
2)ライセンス(使用許諾)
@ライセンサー(許諾者)の監督義務
ライセンサーは、ライセンシーが使用するその登録商標を使用する商品の品質を監督しなければなりません(商標法40条1項)。
Aライセンシー(被許諾者)の品質保証義務
ライセンシーは、その登録商標の使用に係る商品の品質を保証しなければなりません(商標法40条1項)。
Bライセンシー(被許諾者)の商標を使用する商品への表示義務
ライセンシーは、登録商標を使用する商品にライセンシーの名称及び商品の産地を明記しなければなりません(商標法40条2項)。ライセンシーの表示義務違反に対しては、工商行政管理部門が期限を定めて是正を命じ、是正されない場合には、その商標または商標を使用する商品を没収すると規定されています(実施条例44条)。
Cライセンシー(被許諾者)の使用許諾の届出制度
ライセンシーは、商標使用許諾契約書を使用許諾契約締結の日から3ヶ月以内に、商標局に届け出なければなりません(商標法40条3項、実施条例43条)。
商標使用許諾契約書を届け出なくとも、使用許諾の効力には影響を与えませんが、届け出ないときには、被許諾者は許諾された商標権を事情を知らずに譲り受けた善意の新しい商標権者には対抗できません。
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