Q 09.「出願のベース(基礎)」によって、出願、審査、登録等においてどのような差異がありますか?
A9.
(1)出願における差異
いずれの出願ベースも、
@願書
出願人の氏名・名称、住所
商標を用いる商品・サービス
「商標を用いる商品・サービス」の記載は、明確、かつ、具体的に特定することが要求されています。たとえば、衣類について「clothing」と指定したのでは広すぎ、「sweater」程度に具体的に記載する必要がある。
多区分1出願が可能です。
A商標見本(商標を示す図面)
文字商標の場合には、商標図面は添付せず、願書に記載します。
「商標」は、現実に使用している商標又は使用を予定している商標と同一であること
が必要です。
B出願料
Cさらに、
@)使用に基づく出願(1(a))、
使用に基づく出願であることの表示
出願商標の使用開始日
商標の使用見本(specimen)
「使用」
商品やサービスについて単に商標を使用すればよいわけではなく、取引において「誠実かつ真正に使用(bona fide use」する必要があります。
商品商標は、何らかの形で商品自体や包装に付されていなければならない。カタログなどの宣伝広告資料やインボイス(送り状)に付される広告的使用は、商品商標の使用とはされません。
サービスマークに関しては、商品商標とは異なり、広告的使用はサービスマークの使用とされます。
A)使用意思に基づく出願(1(b))、
使用の意図に基づく出願であることの表示
B)パリ条約上の外国登録に基づく出願(44(e))
本国登録に基づく出願であることの表示
本国登録の登録証の写しとその英訳
C)マドリッド協定議定書出願
アメリカを指定国とするマドリッド協定議定書出願(MM2)は、国際事務局がその出願を受け取ったとき、「誠実な使用意思宣言書」(MM18)が添付されていることを条件として、アメリカ出願とみなされます(66条(a))。
(2)審査・登録等における差異
異議申し立て期間中に第三者から異議申し立てがなかった場合、異議申立ての審査した結果異議が認められなかった場合、出願のベースに応じて、特許商標庁から登録出願人に対して、下記の手続きがされます。
@)使用に基づく出願
直ちに登録され、出願人には、商標登録証が送付されます。
登録には登録料の納付の必要はありません。
A)使用の意図に基づく出願
直ちに登録するのではなく、出願人に
登録許可通知が送付されます。出願人が登録を受けるためには、通知を受領した日から6ヶ月以内にその商標の使用を開始するとともに、その旨を陳述する使用陳述書を、商標の使用を示す証拠とともに提出をしなければなりません。延長は6ヶ月ごとに最大5回まで延期できます。したがって、出願人は、
登録許可通日を受け取ってから3年以内に商標を使用すればよいことになります。
提出しない場合には、出願放棄として取り扱われます。
なお、2回目の延期からは、たとえば、商品を開発研究中であるとか、市場調査中、製造中、販売促進活動中、ライセンシー候補者との交渉中、代理店募集中、政府の許可申請中などの理由が必要です。
使用陳述書を審査し(第2回審査)、要件を満たすものと判断されると、登録されます。
B)本国登録に基づく出願
直ちに登録され、出願人には、商標登録証が送付されます。
ただし、現実に使用されなければ排他的権利はありません。
登録のメリット
@優先日(アメリカ出願日。ただし、優先権主張を伴う出願の場合には本国出願日。)以降、使用のみによる先行権利者は、地域的に権利を拡張できません。すなわち、優先日以前から第三者が同一または混同が生じるほど類似する商標を使用している場合において、優先日以降、その地理的範囲において使用継続はできますが、地理的範囲を拡大して使用することができなくなります。
A優先日(アメリカ出願日。ただし、優先権主張を伴う出願の場合には本国出願日。)以降、同一または混同が生じるほど類似する商標について、他のだれも新規の権利を取得することはできません。
C)マドリッド協定議定書出願(保護拡張請求(Extention of Protection))
保護拡張請求は、
使用されていないことを理由として拒絶されることはありません。
拒絶理由がない保護拡張請求については、
「保護拡張証明書」が発行されます。
「保護拡張証明書」は「登録証」に相当するものであり、「保護拡張証明書」の発行日から、
@その保護拡張は、主登録簿における登録と同一の効力及び有効性を有し、
A国際登録保有者は、主登録簿における登録の所有者と同等の権利及び救済を有します。
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